【会社法の基礎知識】会社設立:合同会社という選択

個人事業か法人か
日本でビジネスをはじめようとすると、個人事業でやるか会社形式でやるかという選択がまずあります。個人事業では、事業の債務も全て個人債務になり、有限責任という制度は使えません。そこで、ある程度の規模があるなら、通常は法人化を考えることになるでしょう。何人かで事業をやるときや、許認可の関係で法人化する必要があることもあるでしょう。

【会社の種類:どんな会社を設立するか】

通常は株式会社ですね。
株式会社以外には、持分会社というものがあります。
・合名会社
・合資会社
・合同会社(日本版LLCともいわれます)
この三種類です。
合名会社、合資会社はあまり活用されていないので、ここでは説明を省きますね。

合同会社は最近認知されつつある、企業形態です。大企業でも西友などは採用しており、なかなか魅力のある企業形態ですので、ご説明します。

日本版LLCといわれるのは、日本でできるLimited Liability Companyという意味で、有限責任会社というわけです(株式会社ももちろん有限責任ですけど会社組織が柔軟で米国のLLCに近いのでこういわれるのでしょう)。

合同会社のメリット(他の持分会社との比較で)
これは、なんといっても有限責任です。
出資者が出資額までしか責任を負わないということは、会社を経営している出資者は会社の債務を個人として負わないですむのでリスクを限定できるわけです。(社長個人で保証をしてしまえばだめですけど、もちろん。)株式会社ももちろん有限責任ですから、上場企業など経営と関係ない人が株を売買するわけですが、その点は合同会社も同じです。

なお、合名会社の場合には、出資するとみんなが無限責任、合資会社はその両方がいることになります。つまり、

無限責任を負う人が必要ない
→ 経営者は会社と心中しなくてもよい
→ これは株式会社と合同会社のメリット

なのです。

合同会社の魅力は、株式会社と異なり柔軟な制度設計ができることです。
そこは他の持分会社に近いです。

株式会社と比較した合同会社のメリット
→ 柔軟な設計ができる(注文住宅みたいなもの)

Q 株式会社も合同会社も有限責任ですが、実際に経営者から見たらどんな違いがあるのでしょうか?

合同会社は、出資者自らが業務執行を行うことが原則ですが、株式会社は、出資者である株主が取締役を選任し、取締役が業務執行を行うことを予定しています。

例えば、海外の会社とか国内数社(数人)が出資して経営手腕のある人に役員として業務を任せるような会社なら、株式会社がよいということになります。しかし、経営者みずから出資して会社をつくるなら、合同会社でも株式会社でもいいわけです。

合同会社まとめ1 メリット
合同会社は株式会社や有限責任事業組合(LLP)の中間的なものとなっていて、株式会社と比較すると、
・手続にかかる事務コストが低め(株主総会等の開催手続・官報公告不要)
・現物出資に対する検査役調査等の手続がない
・利益や権限の配分のルールが柔軟で、出資金額の比率に拘束されない

なお、意思決定の迅速さについてはよく言われますが、実は、今の株式会社でも、株主総会と取締役1人での機関構成も可能となっていますので、そのような形態にするならあまり差はなく、株式会社とした場合であっても、機関構成によってどうにでもなるといえます。
もっとも、株式会社の場合、重要な事項について、株主総会の決議が必要ですので多少めんどうではあります。株主が多数になると間違いなく煩雑ですし、召集プロセスについても、株主への通知、株主総会の開催という一連の手続は必要です。もっとも、これについても、簡略化はかなり認められているので、工夫によってはあまり問題ではないでしょう。

「現物出資に対する検査役調査等の手続がない」という点については、少し説明が必要だと思います。現物出資とは、金銭での出資に代えて、事業の実施に必要な財産や特許権などの知的財産権を出資の対象とすることです。
株式会社の場合、例外はありますが、裁判所の選任する検査役の検査が必要になります。数か月の期間と検査役への報酬が必要となるのですが、合同会社の場合にはこのような手続が不要です。従って現物出資を行う必要がある場合には、合同会社の方がより柔軟性があるといえるでしょう。
例外とは、500万円以下の財産及び市場価格のある有価証券について市場価格を超えない場合は、検査役の調査が不要とされていますので、このような現物出資なら違いはないです(会社法33条10項1号、2号)。
利益や権限の配分が出資金額の比率に拘束されないという点は、LLPと同じで非常に柔軟であり、これは魅力的でしょう。

反対に、デメリットとしてはまだまだ合同会社は少なく信用されないこと、株主を募って出資をしてもらうようなことはできないことでしょう。

合同会社のまとめ2:デメリット
デメリット → 認知度が低い(営業面で不利益がある可能性がある)
デメリット → 株主を増やすような形での発展が難しい(第三者割当で増資してIPOを目指すようなことはできません)